2021/07/07 20:58
開発の経緯
2020年新型コロナウイルスの影響により、ピスタチソフトクリーム用の特注ピスタチオペーストの入手が難しくなってしまいました…
そこで新たに手に入れたのが、香り高いイラン産ピスタチでした。
イラン産ピスタチオ入手の経緯につきましては、下記公式ブログの記事をご覧下さい。
新型コロナウイルスの影響とご来店をして頂く事を前提とした商品であるソフトクリームを全面に押し出していた事が仇となり、実店舗の運営に行き詰ってしまいました。
神戸市様の支援事業もあり、フードデリバリーサービスに対応しようかという考えもありましたが、ソフトクリームがお客様のお手元に届いた頃には無惨な姿になっている事は目に見えていました。
他の商品も残念ながら、デリバリーに向くものではありませんでした。
そこで、チーズケーキのみを実験的に販売していたネットショップを本格的に稼働させ、ネット専用商品(実店舗での併売も模索中)としてアイスキャンディーを売り出したのです。
しかし、徐々に多くのお客様はスイーツより、食事を求めているのではないかという考えに変わっていきました。
はっきりとした統計は見当たらなかったものの、巣ごもり消費により冷凍ラーメンの通販や高級パンの売れ行きが良いとの話しを聞いていたからです。
そのような考えの元、弊社の持っているノウハウや材料群、特にこの香り高いピスタチオの活用を考えて絞り出したのが、ピスタチオミルクジャムとピスタチバターだったのです。
開発開始!
開発は並行して行われましたが、先に売り出されたのが「ピスタチバター(有塩)」と「ピスタチオバター(アンチョビ入り)」でした。
先に発売という判断にはなたものの、明らかにピスタチオバターの方がミルクジャムよりも開発が困難でした。
初めの内は粗挽きではなく、ソフトクリームと同じ滑らかなペーストだったのですが、思いの外バターの香りは強く、特にパンに塗ってトーストなどの加熱をするとピスタチオ感が足りず弊社の思い描く商品にはならないという問題にぶつかってしまいました。
弊社の使用しているシルジャン農園のピスタチオ自体は、少量を焙煎するだけで工房全体がピスタチオの香りに包まれるほど香りの高いものですが、同時にとても繊細なのです。
しかし、粗挽きにする事でより香り高く、料理等で加熱しても魅力が失われなくなる事が分かりました。
簡単な事ですが、ソフトクリーム等の製造工程で滑らかに加工をする技術に苦労をしてきた為に、最初の時点では粗挽きにするという発想が出て来づらかったのでしょう。
最終的には粗挽きピスタチオと滑らかなピスタチオペースト混合し、バランスを取るという方法に落ち着きました。
更にパンや料理などに使う上で、ちょうど良いピスタチオの量や塩分やアンチョビとの組み合わせを研究し最適なレシピを作り上げたのです。
その後、更なる細かな微調整を行い中身は完成したのです。
量産とパッケージの問題
中身は完成したと安心したのは束の間、小分け量産の技術と、繊細なバターを包むパッケージの問題にぶつかってしまいました。
そこで、考えたのが型を兼ねた缶に充填をするというアイデアでしたが、汎用品の缶はバターの塩気で錆びてしまう為に、適切なコーティングをする必要が有るとのご指摘を缶メーカー様から頂き頓挫しました。
残念ながら、その様な特殊コートをした缶を仕入れる余力が弊社には残されていなかったのです。 次にプラカップなども考えましたが、これも適当なサイズ感と見た目、耐久性を持ったものが見当たりません。
そこで今度こそ行き着いたのがガラス瓶でしたが、試薬便用の茶色い遮光ガラス製のものは適切なサイズ感の物を見つける事ができませんでした。
なぜ遮光ガラスでなければならないのかと言えば、バターはあまり光に強くないからです。
(今思うと光の影響に関しては少し考えすぎではありました。相当量のピスタチオとのミックスである事、便毎に箱に入れれば遮光できますし、そもそも光の強い過酷な環境に放置される事は考えづらいです)
そこで、最終的に考えたのが陶器に入れるというものでしたが、一般に陶器には蓋がありません。
蓋ぐらいなら高くはないだろうという事で特注品の見積もりを取りましたが、ロット数と価格が想像を超えるもので リスクが大変高い事がわかりました。
見積もりをするにあたって、蓋の試作品は弊社内で作っていました。
ならば、少量であれば量産もできるのではないかという、今思うと浅はかなアイデアが出てきました。
安価な自作キットのカットマシンを購入し組み立て後、作業に合うように改造を行い、制御プログラムを書き簡易的な量産に成功をしたのです。
しかし、切削機の消耗パーツのコストはバカにならず、そこそこの完成度故に手作業による仕上げの大変さ等、問題当初は想定をしていなかった致命的な問題が数多く見つかりました。
大変嬉しい事にピスタチオバターへのお客様からの反響は想定より大きく、ネットだけではなく実店舗にも回す為に生産高を増やす必要もありますので、目処がたち次第、蓋を外注するか瓶+遮光用の箱に変更になるかもわかりません。
この形で買えるのはこのブログ執筆時からそんなに長くはないかも分かりません。
このようなトラブル等により、新型コロナ前半に企画をされたにも関わらず、発売は2021年5月末という非常に遅い時期になってしまいました。
一度ご賞味をして頂ければ大変嬉しく思います。
本記事は以上となります。
お読みいただき誠にありがとうございました。